松直伽の北朝鮮旅行記(2003年12月3日〜12月6日)
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同じツアーに参加された京都大学の吉村哲彦先生の北朝鮮旅行記


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【画像付き文章の朝鮮旅行記】

1.平壌(ピョンヤン)到着
2.平壌の街並み
3.金日成・金正日父子への信心
4.万景台(マンギョンデ)の生家
5.地下鉄乗車
6.万寿台(マンスデ)の丘
7.金日成広場
8.ランチ
9.党創建記念塔
10.チュチェ思想塔
11.6月9日第一中学校
12.犬肉(タンコギ)
13.痩せた穀倉地帯と禿山
14.板門店(パンムンジョム)
15.開城(ケソン)
16.凱旋門
17.祖国解放戦争勝利記念塔
18.ショッピング
19.帰国/雑考
20.付録・「日本は北朝鮮になにをしたの」
【序章】
 日本では毎日、北朝鮮について報道されている。拉致問題、核疑惑、貧困、飢餓、舞台での子供たちの強制されたような画一的な作り笑い、引田天功の身辺に起こる北朝鮮がらみの奇怪な事件など、不気味で暗いニュースばかりである。独裁政治で人々をマインドコントロールしていて、国家に背く思想を持つと死刑になるという、不気味な面ばかりが強調されている。
 私が、北朝鮮に旅行する、と言うと友人や知り合いは、「なんでまたそんな所に?」「大丈夫? 拉致されないように気をつけてね」といった反応をする。北朝鮮に好意的な人は皆無に近い。
 私も、北朝鮮に観光に行かないか、と人から誘われた時、不自由で不気味な国には行きたくない、と少し戸惑った。が同時に、日本ではメディアの情報がもたらすイメージばかりが氾濫していて、私は北朝鮮について何も知らない、北朝鮮の本当の姿はどうなのだろう、という好奇心もあった。
 たったの三泊四日の旅なのだから、自分の目で確かめてみよう、と決心した。
 思いのほか、この短い旅は私の北朝鮮に対するイメージを大きく変えた。
 私は日本のテレビ、新聞、北朝鮮についての本から、北朝鮮の人々は金日成・金正日父子体制の圧制下でさぞかし不自由な思いをして暮らしているのだろう、旅行者に対しても厳重に管理の目を光らせているのだろうと思い込んでいた。
 しかし実際は私が思い込んでいたものとどこか違うような気がした。そこで私は現地のガイドにいろいろ尋ねてみた。するとガイドはびっくりした表情で語気を強めて言った。
「あなたは『胸の金日成氏のバッジは義務ですか?』とか『夜一人で歩くと危険ですか?』とか私たちが宣伝用のために撮っているビデオを『国家に提出するのですか?』とか聞きますけど、それほど独裁的ではありませんよ。私たちは、国から圧力などかけられていません。この胸のバッジは、気持ちなんです。故・金日成主席への気持ちなんです。この気持ちを、簡単には説明できません。朝鮮の歴史や故・金日成主席が私たちのためにしてくださったことを知ると、敬意を表さずにはいられないのです」
 ガイドは心から故・金日成主席を尊敬していた。また日本で報道されている北朝鮮の悪評についても知らなかった。
 私は、日本で報じられている北朝鮮についての記事の内容を言うと、ガイドは首を振りながら、「日本のメディアは朝鮮をねじ曲げて報道している。残念だ。だからもっとたくさんの日本人に観光に来てもらって実際の朝鮮を見てもらいたい」と言っていた。
 それでも私は、北朝鮮の人々が金日成・金正日父子体制に従順なのは、金日成・金正日父子を怖がっているからだと思った。それを伝えると、ガイドはショックを受けたようで言葉を失って俯いていた。
 実際に、故・金日成主席のバッジは任意でつけるものであり、つけていない人もいた。私は、日本の北朝鮮についての本や雑誌や新聞をガイドにプレゼントしたが、日本で報じられているほど不自由で規制が厳しいとは思わなかった。
 小さく貧しい国で、市民は純朴に故・金日成主席と金正日総書記を信じて真面目に働き、平和を愛して一生懸命に生きようとしていた。
 年間3万人以上もの多くの自殺者が出ていて、虐めや学級崩壊、ニートや引きこもりやフリーター、家庭内暴力、青少年の凶悪犯罪、ホームレスが増えている日本よりは、平壌の市民の方が心の満足度が高いように思われた。ガイドは、北朝鮮の学校では虐めや学級崩壊などない、働かなくては食べていけないから引きこもりもない、自殺者も少ないと言っていた。実際、乞食やホームレスなどは見かけなかった。今でも脱北者はいるけれども、反国家思想のためではなく食糧不足のためだ。地方では、食糧配給が滞りがちだと言っていた。
 平壌では、普通の生活水準が保たれているそうで、1999年までの飢饉の問題がドラマになっていて、人々は鑑賞し教訓を得ているそうだ。
 人びとは親切で、みんな、「今は難しい時期だけど、本当は日本と仲良くしたい」と言っていた。ガイドも「ここで見たことや体験したことを、日本のご家族やお友達の皆さまに伝えて下さい。朝鮮の人々は平和や日本との友好関係を望んでいることをどうかわかってください」と必死で訴えていた。
 兵士たちも友好的で親切だった。
 反日感情はほとんどないか、あってもソフトなものであり、それよりも米国に対しての敵対心が強かった。
 朝鮮が南(韓国)と北(自国)に分断された悲しみ、自分たちを利用して朝鮮戦争を起こした米国(と北朝鮮の人は言っていた)への憎しみがあった。故・金日成主席・金正日総書記を心から尊敬していて、金日成・金正日父子の独裁政治に政策ミスがあるかもしれないという疑いや批判やまったく持っていなかった。
 これまで歴史的に北朝鮮から他国に侵攻して戦争を起こしたことがない誇りがあると言っていた。
 北朝鮮の核問題について聞くと、米国が、韓国の基地に北朝鮮に向けて核や大量破壊兵器を配備して軍事演習をして脅かしているから、こちらも自国を守るために軍事力を強化せざるを得ないのだと言っていた。
 米国が核などの軍事力で北朝鮮を脅かしていながら、北朝鮮が核開発していると非難するのは理不尽だ。
 双方とも、核を廃棄すべきだ。
 米国が北朝鮮に向けて核配備したり軍事演習をして脅威を与えていることが、北朝鮮と韓国の統一を妨げている大きな原因の一つになっている。
 米国が、核や大量破壊兵器で北朝鮮を脅している限り、北朝鮮の核問題も解決されないだろう。
 また6者協議でも、米国に有利な話し合いをするのではなく、公正な話し合いをするべきだ。そうすれば、北朝鮮は復帰するのではないだろうか。

 拉致問題について、 家族会、救う会、拉致議連は、「北朝鮮への食糧支援の凍結はもとより、経済制裁の発動を決断すべきだ」と、日本政府に制裁発動を求めている。
 私も被害者の方々の心中を考えると心が痛む。
 しかし、彼らの発言のせいで、日朝関係がますますこじれて米国が「北朝鮮は脅威だ」と戦争でもし始めたら日本も打撃を受ける。私はこうした事のために死にたくない。彼らの発言は、正直言って迷惑だ。
 家族会、救う会、拉致議連は今や日本を動かす権力者ではないか。
 彼らは、日本政府による経済制裁ではなく、北朝鮮に賠償金を求めれば良いと思う。
 日本から一緒に来られた添乗員の北朝鮮人の方も、「拉致問題は、かつて日本が朝鮮を侵略した事までさかのぼって話し合うべきだ」と言っていた。
 在日北朝鮮人の妻を持ち朝鮮語の翻訳業をされているY氏も次のように言っておられた。
「朝鮮は今だに戦争の痛手を負っている。旧ソ連や他の東欧諸国など共産圏の崩壊による経済困難、日本と国交は途絶え、韓国、米国とも対立していて、国際的に孤立している。日本にとっては第二次世界大戦はとっくに終わったことだが、朝鮮にとっては戦争は今なお続いているのだ。その認識の違いを理解しなくてはいけない」
 
 確かに日本は戦前・戦中に北朝鮮を侵略した事に対して賠償金・補償金を支払っていない。北朝鮮は痛手を負って、経済困窮と食糧不足に喘いでいるままだ。そうした事も、拉致問題の原因の一つとなっているのではないだろうか。かつて日本は北朝鮮を侵略・戦争して、莫大な数の犠牲者を出して、彼らの誇りと伝統、文化、国土を破壊した。おまけに朝鮮戦争では、日本は米国を支援して儲けた。
 こうした戦争犯罪への謝罪(賠償、補償)をしないままに、北朝鮮の犯罪を追及する資格があるだろうか?
 日本が北朝鮮に謝罪(賠償、補償)をしないままに、北朝鮮を咎め経済制裁を行ったところで、北朝鮮が「ごめんなさい」と反省するだろうか?
 私には、経済制裁は賢いやり方とは思えない。北朝鮮は余計に怒り、日本にミサイルを打ち込むか、在日北朝鮮工作員がテロ攻撃してくるかもしれない。そこで、日本が米国と協力して軍事攻撃する事になると、お互いに罪に罪を重ねることになり、ますます真の解決と平和から遠ざかることになるだろう。
  日本は、戦前・戦中に行った朝鮮侵略についてしっかりと公正な調査をして、北朝鮮に謝罪し賠償金・補償金を支払い、きちんと責任を取るべきだったと思う。その上で、北朝鮮の犯罪を追及すべきだった。
 政治家には、日本が北朝鮮に謝罪し支払うべき賠償金・補償金、北朝鮮が日本に謝罪し拉致被害者に支払うべき賠償金・補償金、日本がこれまで行ってきた北朝鮮への支援、など一つ一つ勘定してから、北朝鮮への対応を決めて欲しい。
 日本が過去の侵略や戦争の責任をきちんと取って、北朝鮮、中国、その他のアジアの国々と信頼関係を築いていれば、それほど北朝鮮(や中国)が脅威にはならないと思うし、米国の軍事力に依存して戦争に追従する必要もないと思う。
 日本はまず、過去の侵略や戦争に対して心から反省をし、小泉首相の靖国神社公式参拝や過去の戦争を正当化する内容の教科書作りをやめるべきだ。
 自民党や右派政治家たちは、過去の戦争を正当化して、戦犯者たちを「国のために殉じた」と英雄化することで、日本に誇りを持ち「愛国心」を持たせようとしている。
 この「愛国心」は欺瞞である。欺瞞の「愛国心」が北朝鮮や中国などアジアの国々との友好関係を妨げるものとなっている。
 日本が欺瞞を押し通す限り、本当の愛国心や誇りを持つことはできない。

 北朝鮮のガイドが「拉致することは絶対に許される行為ではなく自国も反省しています。しかし日本は彼らを一時的に北朝鮮に戻らせる約束を破っている。感情的で冷静さを欠いた判断です。金正日将軍は、日本を嫌いではありません。しかし日本が約束を破ったことにはカチンときました。その約束が果たされた後に、日本に帰国したい人は日本に帰して、責任をとるつもりなんですよ」と言っていた。
 北朝鮮が行った拉致事件は許されない犯罪であるが、日本が約束を破ったのも良くないと思う。
 しかし、いくら拉致が犯罪とはいえ日本が約束を破ってしまうことで、北朝鮮が悪いことを致しました、許してください、と反省するわけがないし、それどころか北朝鮮はよけいに硬化し日朝関係が拗れることは、あらかじめわかっていたことだ。
 また拉致議連や安倍晋三・自民党幹事長などタカ派の政治家たちが、拉致問題を政治に利用しようとしている。
 必要以上に、北朝鮮は信用できない、北朝鮮は嘘つきだ、北朝鮮は不気味だ、とメディアを誘導し市民に不安感を与えようとしているのだ。
 そうすれば、タカ派の政治家たちの思惑通りに日本の軍事化が進み、世界に大きな顔をすることができる、と考えているからだ。
 そのため、日本のメディアは、北朝鮮の姿を歪曲して報道している。
 (北朝鮮を叩く内容の番組を放送する方が視聴率が上がるそうだ。不景気で、不満や不平やストレスを溜め込んでいる日本人が、北朝鮮バッシングにはけ口を見出しているのだ)
 北朝鮮の人々は確かに金日成氏・金正日氏にマインドコントロールされているが、私たちもまた政治家やメディアの情報に踊らされている。

 大韓航空機爆破事件も、実は韓国側の捏造ではないか、という疑惑が出てきている。(この問題についての本はすでに韓国で出版されていて日本でも出版されるそうだ)

 北朝鮮だけが、嘘つき国家であるわけではない。(米国の方がよほど嘘つき国家だ)
 北朝鮮も、米国の軍事力から自国を守ろうとしている、貧困から抜け出してなんとか生き延びようとしている、他の国と変わりがない。

 私がこの短期旅行で見たもの、聞いたこと、感じたこと、そのままをここに記しておきたい。

【画像付き文章の朝鮮旅行記】